水を知る
AQUA / Life
Human Body
水と体
夏になると、涼しさを求めて海やプールに行きたくなります。とはいえ、ここ数年の夏の暑さは、一昔前とは大きく違うことは言うまでもなく、涼しいはずの水中も注意しなくてはなりません。というのも、今年は屋外プールのある学校では暑さのため、熱中症のリスクからプールが中止になるという事態が起きています。
水の中なのに熱中症? と疑問が湧きますが、水中での運動は陸上以上に運動量が増えて体温が上がりやすいのに、汗が蒸発しにくく熱が体内にこもりやすいといいます。加えて、のどの渇きに気づきにくいというリスクも。紫外線も年々強くなっているため、海やプールでも日焼けや熱中症にくれぐれも注意して楽しみましょう。
プールや海の水が鼻に入ったときに鼻の奥が「ツーン」となりますよね。お風呂のお湯でもなるのは、誰もが経験したことがあるはず。この「ツーン」、実は体に危険を知らせるサインというのを知っていますか?
私たちの体の中を流れる血液やリンパ液などの液体を体液といいますが、体液は約0.9%の塩分濃度があります(水分100mlあたり0.9g)。体液とは異なる塩分濃度の水が体内に浸入すると細胞が危険にさらされるため、お風呂やプールの水は私たちの体にとっては「危険な水」。そのため、体は危険な水が入ってきたことを「ツーン」という痛みで知らせて守ろうとするのです。
これは、実はTRP(トリップ)チャネルという体に備わった感覚センサーの反応によるもの。TRPチャネルは、温度を感じるセンサーとして知られていますが、私たちの体のあらゆる細胞にあって、「外敵」や「変化」に反応して脳に知らせてくれます。つまり、周りの環境の変化や危険から体を守ってくれているのです。
27種類あるTRPチャネルの中でも温度を感じるのは11種類あって、たとえば43℃以上の「熱さ」はTRPV1(トリップ・ブイワン)が、約26℃以下の「涼しい~寒い」という温度はTRPM8(トリップ・エムエイト)が感知しているといいます。暑さを感知すると脳は汗をかいて体温を下げるように指令を出し、寒い場合は、TRPM8が反応した結果、体は血管を締めて熱が外に逃げないようにします。真夏の暑い日に外にいて汗をかくときと、冷房の効いた室内で涼しく感じるときは別のTRPチャネルが反応しているのです。
ちなみに、水が鼻に入ったときにツーンとするのは、TRPA1(トリップ・エーワン)が反応するため。これは、ワサビを食べたときの「ツーン」とくる刺激と同じで、ワサビの「ツーン」も同じTRPA1を刺激することで起こります。
水にはさまざまなモノを溶かすという特殊な性質があるため、一見「同じ水」に見えても甘かったり、しょっぱかったりしますが、体のセンサーは「水の違い」をしっかり感知するのですね。ちなみに、塩分濃度0.9%の水ならツーンとなりません。500mlの水に小さじ1杯(約4.5g)の塩を入れて試してみてはいかがでしょう。
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